かつては吉良知彦とZABADAKを組み、透明感あふれるヴォーカルを聴かせていた上野洋子の2002年発表のソロ・アルバム。一人多重録音によるコーラスワークをメインとしたアルバム『VOICES』(‘93年)の第2弾ともとらえられる作品だが、前作よりもますますアレンジが複雑となり、9年の間の技術的な進歩や、ひいては“アーティスト=上野洋子”の成長ぶりを実感できる仕上がりとなっている。
歌詞のない、神秘的な空気感に包まれたヴォーカル・ワールドは、厳粛な気分を誘いつつも、上質のヒーリング・ミュージックとしても機能している。聴き手に自由なイマジネーションを喚起させるところが素晴らしい。(木村ユタカ)