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書を楽しもう (岩波ジュニア新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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書の鑑賞の案内 ★★★★☆
 音楽や絵画は作る人よりも鑑賞する人の方が多いのに、書は書道という形で作る立場から楽しむ人の方が多いという状況にあります。これに対し、書の鑑賞をもっと楽しんでもらおうという意図から書かれたのがこの本です。王羲之と空海の書の比較からはじまり、良寛を取り上げ、最後の章「書は心の画であるという」では、大石内蔵助、坂本竜馬、田中正造、樋口一葉、日比野五鳳、片岡鶴太郎らの書を紹介して解説を加えています。
 中国の書が技法的な傾向が強いのに対し、日本では精神的な面が強いという解説があり、最後の章の題が示すようにこの本は後者の線に沿って書かれています。私自身は技法的な興味からこの本を読んだのでちょっと当て外れで、心の画という面に引き込まれるということにもなりませんでした。それでも筆の弾力を生かす書き方の解説という収穫はありました。著者の意図するような本にするには、新書版ではなくもっと大きな版型で豊富な図版を収録して解説は最小限に留めたほうが効果的だと思います。
実と理を兼ね備えた書の達人による啓蒙書 ★★★★★
 著者は張廉卿(ちょうれんけい)、その弟子である詠士宮島大八の流れを汲む中峰書法の正統的継承者である。(私は一時、指導していただいた不肖の弟子の一人。弟子というのはおこがましいかな?)いわゆる日本の「習字教室」的な流派や派閥とは離れたところで、ずっと堅実な仕事を積み重ねられている。

 書のうまい人はそれこそたくさんいるだろうが、高度な書の理論をも踏まえて、実証的学術的に文章を書ける人は少ないだろう。その点、この著者は書の実作はもちろんのこと、学者としても実績十分である。この本はその「卿山(けいざん)先生」が、書のあれこれについてわかりやすく述べたもの。日本人ならば、書芸術についての教養はあるほうがいい。さあ、我々も「書を楽しもう」!