1969年の東京の風景
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松本隆の言う「風街」の恐らく最後の光景がここに残されている。1969年は私の生年で、もちろん私の記憶にない光景である。私はせいぜい1974年頃の光景しか覚えていないが、東京の風俗が地方に波及するのには多少時間がかかるから、この感じは私にとっても不思議なノスタルジーを感じるところである。
とはいえ、ここにはディスコティックやデモ隊、時代を経たとはいえ変わらぬ渋谷の夜の光景も写っている。そしてはっぴいえんどやエイプリル・フールなど、伝説のように祭り上げられた人達が何気なく現れている。まだ、東京においてもローカルな状態だったのだ。パーティーをやったり、ドライブしたりである。それは「目撃」できる。
例えば20年前に、私は趣味で何気なく回りの光景を写真に取り続けた。それを今見返すととても貴重な映像記録になってしまっている。私でさえこうなのだから、野上氏の撮影したこれらの何百葉はまさしく貴重以外の何者でもない。当の本人は当時何気なく撮影していたとしてもだ。もちろん、下巻も貴重だが、こちらはどちらかというとミュージシャン達の「公式カメラマン」になった感じがする。自然な70年代はこちらの方が溢れている。