本書が一般的な子ども向けの飼育ガイドと一線を画しているのは、著者がともに日本を代表する昆虫カメラマンであるという点。大きな枝や葉を入れるときは、飼育ケースを立てて使う。アゲハチョウのさなぎを支える糸が切れたときは、木工用ボンドで紙にくっつける。羽化するときの足がかりのためにティッシュペーパーを用意するなど、撮影の過程で著者らが実際に行っている飼育法は、いずれも具体的でわかりやすく実践的だ。
そしてなんといっても目をひくのは、一枚一枚の写真の美しさ。桃色のマツバギクの上で花粉を食べるキリギリスの透き通るような輝き。鮮やかな緑色をしたヤママユガの繭。大きな2つのツノがユーモラスなゴマダラチョウの幼虫のアップ。ギンヤンマが羽化する様子をとらえた連続写真。身近であるがゆえに見落としていた昆虫たちの意外な世界に、子どもだけでなく大人までも引き込まれてしまいそうになる。夏休みの自由研究に親子で役立ててみたい1冊だ。(中島正敏)