自然に向かい合って雄弁なアメリカ精神
★★★★★
19世紀中盤のアメリカで自然の中に暮らした著者が、雄弁に詩情と思想を語った書。読んでいる最中はその言葉に酔ってしまうのを止められないが、後で考えると何かしら奇妙な感慨に囚われる。
それは、描写を読むほどに存在感のある自然の景色の中で、まったく雄弁さが衰えることのないことだ。人が生きることの本質についてや、豊富な古典作品への造詣、経済についてのまなざし、自分が感受した印象、まったく流暢さの途切れることがない。それは読んでいるとぐっと来る要素でもあるが、その内に何か違和感を感じ始める。自然の中にいると言葉少なになっていくのが、自分にとってはそれこそ自然な感じ方に思えるからだ。
わずかながらの経験で言えば、自然の中で労働したり生活していくと、はじめは自分の中の意識が心の中で過剰に反響していくが、日に照らされたり風に吹かれたり雨に打たれたりの中で無心で汗をかいていくうちに、ふとしたときに自然の静寂さと自分の静寂さがシンクロするときがあり、上手く言葉にはならない感じのそこに、自然の中にいる何らかの醍醐味があると思うのだが、そして日本伝統の物語や短歌・俳句の世界はそんな上手くいえない部分を言葉少なに言うことで絶妙に捉えていると思うのだが、この著書では澱みのない多弁が繰り返し繰り返され、自然の中にいる静けさ(津軽弁を交えて言えば、「自然が、ばほらっと自然だ」という感じ)を感じる余地がない。それはやはり、アメリカ精神の典型なのだろうか。文化の型の差、といえばそれまでだが。
この著書はホイットマンの詩作にも影響があったように見えるし、その詩情と思想を交えた多弁さは、後のジャック・ケルアックの散文にも強い影響を与えているのは間違いないと思う。とはいえ、何か不思議な読後感のある一冊。
質素簡素な元祖エコ生活のすすめ
★★★★★
当初この本を買ったときは、地味で苦手な内容に辟易し、しばらくの間、といっても2年以上にもなるが、ほっぽらかしていた。いわゆる、積読状態。しかし、なんだか気になるってんで、そこで再び読み出してみると、これがいい、実にいい。元祖草食男子、LOHAS家元って感じだろうか、いまのエコブームの先取りとして、贅沢な消費社会に慣れてしまった我々に、実に示唆に富んだ意見を披瀝している。
1845年のアメリカの独立記念日、つまり7月4日から、ソローはウオールデン湖畔に自分で小屋を建て、一人で自給自足の実験的生活を始めたのだが、この年、彼はまだ28歳だったのだ。もっと、齢を重ねてから、このような生活を始めたのかと思っていたのだが、意外だった。日本では、明治維新前で、あの坂本竜馬はやっと10歳になった頃か・・・・・。
ファーブルの「昆虫記」も真っ青って感じの、赤アリと黒アリの壮絶な戦いのシーン。この生き生きとした記述が印象深い。また地域の色とりどりの四季の景観描写、そこに現れる様々な生き物、しつこく登場するウッドチャック、地元民との交流。文明批評をも含め、1847年9月6日に湖畔を去るまでの2年2ヶ月と2日間の生活が生き生きと描かれている。
そして彼は自らのこの実験を以下のように総括しているのだ。
「もし人が、自ら夢の方向に自信を持って進み、頭に思い描いたとおりの人生を生きようとつとめるならば、ふだんは予想もしなかったほどの成功を収めることができる。」
簡素な生活
★☆☆☆☆
ほんとは5つ星です!うまく操作できずに1つ星になってます。
ソローさん、ごめんなさい!
森の生活は、ソローの2年間のウォールデンでの自給自足の生活と思想の記録です。
途上国で生活した後、日本で生活していると、
先のことを予測したり、周囲人に面倒をかけないために、
物事はより複雑に、込み入っているように思えます。
そんな中で、この本を読むと、大切なのは、自分の考えをしっかり持ち、
自分の頭の中を「他人の思想にしないこと」なんだ、と改めて思います。
忙しい生活の中、自分の考えがあると、大変なこともあるけれど、
筋が通っているとふらつかず、自分で立っていられるという強みがある。
そんな強さを持つには、ゆっくり自分を見つめる時間をもつこと。
そう考えると、贅沢や周囲の目をきにしなければ、
1年を過ごすのに必要な収入は6週間で稼ぐことできる、
あくせく働いて、自分をすり減らして、それで人生を享受してるといえるの?
と問うソローのこの本は、
簡素にどう暮らすかを実体験から教えてくれている
貴重な示唆本だといえます。
生き方は色々ある
★★★☆☆
森の生活という題だが、なかなかに経済の話が満載の本だ。著者は経済感覚がかなり優れた人なのだろう。とにかく自分の仕事に家庭に置き換えて読んでみると凄く為になってくる。
「自分自身の生き方をみつけ、貫いてほしいものだ」という一文があり、もっと内観せよ、というメッセージに満ち溢れている。
「大人のほうは、生きるに値する人生を送ることが出来ないくせに、経験によって子供たちよりも賢くなったと思い込んでいる」には大いに頷き大いに我が身を振り返らせてくれる。
訳し方に問題があるのか、ダラダラした感じは否めない。
タイトルとおりの内容、気持ちのいい読書はできるが。
★★★☆☆
読後感も、読んでいる時の気持ちも上より良かった。
森の生態とか、筆者の感じたことが淡々と書かれていてまさにタイトルとおりの本であった。
ただ、逆に下巻は筆者の考えたことがあまり書かれていない感じがして、自分の知的な好奇心を満たしたかというと疑問がある。上はぐだぐだと比喩がながくて、集中をして読みにくかったし。
そういった意味では、読み返さないかもしれない。。。