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Brick Lane

価格: ¥586
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Transworld
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   この洞察力に満ちた、感傷を排したデビュー作でアリが描いた移民の世界は、ザディー・スミスの雑駁でで多文化的なロンドンと共通する点が多々ある。と言っても、温室でぬくぬくしている主人公は、仲間のバングラディシュ人たちに囲まれながら、イーストエンドの崩れかかった団地から出ることはめったにない。東パキスタンが舞台の冒頭部(ナズニーンの妹で美人のハシナは駆け落ち結婚し、おとなしくて地味なナズニーンは年輩の男性と結婚させられる)に続け、アリは、夫に連れられて生活することになるロンドンでのナズニーンの暮らしを細部まで正確に描きはじめる。

   シャヌーは自分のことを失意のインテリと思っていて、ことあるごとに「移住の悲劇」について自分の若い妻(そして、聞いてくれそうなすべての人)に語るのだった。だが、虐げられたハシナからの便りは、理想化された彼のバングラディシュの思い出とは対照的な内容だった。一方、ナズニーンは、主婦として、母親として、どちらかというと束縛された生活を送っていた。1980年代、90年代のロンドンでの彼女の経験の大半は、自分の子どもたち(反抗的なシャハーナと従順なビビ)やいろいろな形で同化した隣人たちを介した間接的なものである。登場人物が抱える現実味のある複雑な状況は地味ながら実によく描かれている。ナズニーンはころ合いを見計らって消極的な態度をかなぐり捨てる。脇役である無能な家長シャヌーや、ナズニーンの隣人で、生活苦と闘う反抗的なラジア(ユニオンジャックのトレーナーを誇らし気に着ている)、若い過激派イスラム教徒のカリム(ナズニーンが関係を持ってしまう相手)など、すべての人物がみごとに描かれている。著者は、それぞれの見解に重点を置きながら、アイデンティティーと同化という、さらに大きな問題を取りあげているが、事実に対して過度に注意を引くようなことはない。また、9.11の問題にさえ潔く取り組んでいる。この小説は、注意深い観察と確信にもとづいていたもので、華々しさはない。作品の力強さは、不幸な人物、希望に満ちた人物を見つめる著者の厳しい目にある。
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