このにんじんがとにかく酷い扱いを受けていて、母親からは何かある度に罵倒の言葉を浴びせられ、兄や姉はそれを横目で見ているだけ。そんなにんじんがいたいけで純粋な子供かというと、これがまた大間違い。不潔で嘘つきで、猫やモグラを殺すほど残酷、教師や年老いた女中を卑劣な方法で追い出してしまう、とても読者にとって愛すべき主人公ではありません。
でも、にんじんは何とか母親に構ってほしくて、冷淡に扱われながらも何とか母親の気を引こうとします。大好きなパパからキスを拒絶され、ガーンとショックを受けたりします。舎監に可愛がられている級友に猛烈に嫉妬したりします。ガールフレンドのマチルダと結婚式ごっこをしたり、女中と日課の仕事についてきちんと話し合ったり、本当は寂しがりやでたくましい少年なのです。残酷や嘘つきなところも、ある意味では本来の子供の姿が正直に描かれていると思います。