試合に負けても勝負に勝つ
★★★★☆
世界には死が満ち溢れている。
当然だけど、生まれた人はすべて死ぬ。どんな形であれ、どういう理由であれ、死ぬ。
残念ながら、現代の医学はそんなに万能なものではない。わからないことやできないこともいっぱいある。死を免れることは誰にもできない。
その中で、この主人公が際立つのは、死の形ではなく、生の形のためだと思う。
最後まで、あきらめない。その姿勢に、驚かされた。取り巻く家族や友人らのサポートも素晴らしい。
ここに書き残されなかったエピソードもきっとあると思うが、コンパクトにまとめられ、ルビも多い本書なら、中学生以下でも読める。そのあたりは、童話作家の著者の配慮が行き届いている。
死は触れる人を打ちのめすような威力があるけれども、元気ビームを受け取ったり、送ったり、勇気の循環の一員にもなれるだろう。
友情
★★★★★
誰もが自分が病気になるなんて思わない。
突然襲ってくる病と戦いながらも懸命に生きようとする雄基くんの姿。
彼を励まし続けるかけがえのない友達。仲間って素晴らしい。
読んでいるうちに目頭が熱くなり鼻の奥がツーんとして・・・。
毎日を単調に過ごしている自分がなんだか申し訳なく、精一杯いきて行こうという思いに駆られました。
オーストラリアに留学していたこともあったいただきのでいろいろ思い出しながら読ませていただきました。
ユウキの前向きさとまわりの友情の温かさが胸を打つ。
★★★★☆
顔の骨が溶ける進行性の病気。
右奥歯かみ合わせの違和感から始まったそれは、ゆうきの片目も鼻をも奪ってゆく。
それでもユウキは、絶望して自分を閉ざすことなく、昔からの持ち前の元気さと明るさとで、周りに光をもたらし続ける。
彼の生き様、愛犬とのやりとり、スポーツバカなところ、大食いなところ、カメラやバイクなどなんでも挑戦しようとするところ、家族や仲間たちへの愛など全てが、きらきらして見える。
オーストラリアで知り合った仲間たちが一致団結して、壮絶な闘病を続けるユウキを支える。
こんな素敵な仲間たちに恵まれたのもひとえに、彼の生まれ持った人格と資質の素晴らしさゆえであろう。
幸運にも五体満足で生まれ、健康体で今日まで生きてきた私が、ほんの些細なこと、職場の人間関係がどうとか、仕事でミスをしたとか、恋愛がうまくいかないなどのことで悩み、落ち込み、死にたくなったりするのは、まったくもって贅沢で傲慢なことだと感じた。
溢れるような意欲と愛情を持ったユウキは、生きたくても生きられなかった。
神から与えられた1日1日を、大切にしていこうと思わせられた本。
漢字に振り仮名も振ってあり、簡潔な言葉でつむがれているので、小学生でも読める本だと思う。大勢の人に読んでもらいたい。
命があるだけで、自分がいかに幸福で幸運なのかを思い出して欲しい。