夕方の紙芝居にはご注意を……
★★★★☆
前半は,小林少年が二十面相の出す謎を解き明かしていき,後半は,明智小五郎が二十面相を翻弄し,最後には勝利を収める,という構成になっています。
今回も,トリック自体は他作品の使い回しや換骨奪胎ですが,それでも読者を魅了して止みません。
それは,冒頭から現れています。
夕方の「紙芝居」ならぬ「移動映画館」は,それを見る少年たちをわくわくどきどきさせずにはおきません。しかし,やがては物語に幕がおり,少年たちは残念な気分で家路につくのでしょう。幕引きをあきらめきれない少年は,思わず「自転車」ならぬ「自動車」のあとをふらふらとついて行ってしまうかもしれません。
そのような子どもの心理(「真理」か!)を,乱歩は見事に捉えています。このあたりは,流石と言わざるを得ません。
また,「地底のアジト」「胎内くぐり」といった場面設定も,秘密基地作りに夢中になった(かつての)少年たちには我がことのように感じられると思います。
このような「わくわく感」「秘密感」こそが,少年探偵団シリーズの真骨頂といえるでしょう。
本作もそのような気分を存分に感じさせてくれます。
マンネリと言われつつも,やはり引き込まれるように読んでしまうのです。