この「かさこじぞう」（文・岩崎京子）は、子どもが小２（12月頃）の時に国語の教科書に出てきて、毎日、音読の宿題で聴かせてもらっていました。
まだあどけなさの残る子どもの声で読む、「こめの　もちこ　ひとうす　ばったら」というかけ声がとても可愛くて、毎日楽しみでした。

そんな時、思いがけず、お隣や実家でお餅つきがあり、「縁起ものだから」と杵でつかせていただいたのですが、その時、この「ひとうす　ばったら」のフレーズがヒューッと右耳から左耳を駆け抜けていきました。
「かさこじぞうのお話もこんなかんじだったのかなぁ・・・」と子どもと言いながら、杵つきの感触を味わういい機会が得られました。

たまたまうちにもこの絵本があり、子どもが「わぁ〜、教科書と同じだ〜！」と餅つきの体験とオーバーラップしたのか、興味深そうに文章をチェックしていました。（絵は違いますが。）

他にも、「じょいやさ　じょいやさ」というそりを牽くかけ声や、「ずっさん　ずっさん」といった温かみにあふれたオノマトペやリズム感のある表現、老夫婦の落ち着いた雰囲気を感じさせる文体などが新井五郎の絵とよく合っていて、厳しい経済状態と厳寒の冬の中での心温まる民話にプラスα、包み込むようなふんわりとした温かさが余韻として残る一冊です。

（※巻末に、もうひとつの民話　「ものいう　かめ」と　こどもと民話（実践記録）「かさこじぞう」が入っています。）

貧しさの中でも互いを思いやり、心豊かに生きるじいさまとばあさま、そしておじぞうさまの心の交流が、岩崎京子のやわらかな文章で描かれます。
新井五郎の味わい深い絵と相まって、現代に生きる我々が忘れかけたものを思い出させてくれる、そんなお話です。
ぜひ親子で読みたい一冊でしょう。