神様は心にも住んでいるのかも
★★★★☆
人は誰でも福の神にあやかりたいもの。それなのに長年住みついた貧乏神に愛情を注ぎ、福の神を追い出してしまうという話が『びんぼうがみと ふくのかみ』です。義理と人情に厚く、貧乏もなんのその、と日々の生活を一生懸命に働いて過ごす農家の夫婦と住みついた貧乏神との会話が愉快です。
山形県最上地方と庄内の一部に伝わる民話がもとになっています。暮らしの貧しかった長い間に、農民の貧乏をなめつくした生活の中から生まれた楽天的に物事を考えるというユーモラスな発想が素晴しいと作者は語っています。
浅田次郎原作の「憑神」という話があります。貧乏神、疫病神、死神の三人の災いの神に取り付かれた江戸時代の下級武士の生き様も人間味溢れる展開に、生きることへ意義を力強く感じさせてくれます。
この絵本も「憑神」も人についてまわる物質的な貧しさも人の中に住む卑しさも、気持ちの持ち方で福につながっていきそうな前向きな生き方を教えてくれるような気がします。