さすが、芥川……。少年の不安だけの物語ではなかったのだ。
★★★★★
良平は工事現場へ毎日、トロッコを見物に行っていたが、ある夕方、トロッコを押す手伝いを申し出て、念願のトロッコを若い土工と一緒に押したり、乗ったりしてついていく。最初面白がっていた良平は、トロッコがどこまでも走っていくことにだんだん、不安を感じてくる。そして、土工から、「われはもう帰んな。おれたちは今日は向こう泊まりだから。」と言われ、……。暗くなった道を家目指して一心に走り続ける良平……。
良平の気持ちが、不安感を伴って痛いほど迫ってくる。染色画がマッチしていると思う。
子どもの頃読んだときには、家に帰ったところで終わったと思っていたが、続きがあったのだ。少年の不安だけの物語ではなかったのだ。さすが、芥川と思った。