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表現する仕事がしたい! (岩波ジュニア新書)

価格: ¥1
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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プロフェッショナル ★★★★☆
表現に関する様々な分野で活躍するプロフェッショナルがその仕事に就いた経緯やその仕事自体について述べたエッセイ集です。言葉で表現することが仕事とは限りませんが,表現者ということで文章のスタイルもいろいろです。

総じて,表現するということは自己と他者の違いを認識して,その自分を何かの形といして示すことであり,それを仕事にするということは多くの人が喜ぶ方向性へ進んでいくということなのではないかと思いました。本書で取り上げられているような芸術に関する仕事が表現する仕事のすべてではなく,プロフェッショナルの仕事はすべて表現する仕事であると気づかされました。
表現者ならではのさり気ないしかし珠玉のコメントが並ぶ ★★★★★
様々な表現分野(漫画、音楽、CM、映像、美術、舞台など)の最前線で活躍されている13氏が、その若き日に自らの道をどう選び取ってきたのか、いかにして様々な悩みを乗り越えてきたのか等々、その来歴を自分の言葉で記した一書。(どれもこれもよかったが、個人的なお勧めとしては、特に沢則行氏、丸田祥三氏、安田真奈氏そして横尾美美氏のものが印象に残っている。)

「自分自身の心と身体で感じとった現実の痛みや喜びや涙だけが、生き生きとキャラクターを動かすことができるのです」(10頁)。
「学校とは、その環境の中で、努力を惜しまず、たとえ自分の思うように上達しなかったり、好成績を収められなかったりしても、決して自分を見失わず、次の目標に向かって淡々と前進する精神を鍛える場所なのだと思います」(19頁)。
「そもそも生きていること自体が表現なのかとも思う」(40頁)。
「反省するべき点はあっても後悔することだけはないように、全力で映画を作ります」(75頁)。
「誰でもスランプにおちいると、何もかも悪いほうに考えがちです。意外と身近に味方がいたり、状況はそれほど悪くなかったりするのに、視界が狭くなってそれに気づけなくなるのです」(185頁)。

以上、数例しか挙げられなかったものの、いずれの各編にも何かこう心にグサリと届く(響く)さりげないコメントが必ずあったところに13氏のいわば「凄味」を感じ、自らも勇気づけられた。年齢を問わず是非。
現代の表現世界がよくわかる ★★★★★
 13人の表現者がそれぞれの思いと仕事観を語り、後輩への呼びかけをしている。
 意図してではないだろうが、女性が8人で男性が5人。女性は音楽が4人、映画が2人、マンガと美術が各一人。男性はCMプランナー、人形劇師、狂言師、現代美術家、写真家。

 表現の仕事は他にもたくさんあると「はじめに」で編集部が断っているけれども、現代社会での表現活動の先端部分から選ばれたようにも思える。小説家、エッセイストなど文章での表現をする人がいないのが淋しいかとは思った。

 音楽関係の人は幼少からコンクールなどで活躍している例が多く、美術関係の人は活躍の認められ方が遅いよう。映画も含めて成人してからの生活と表現活動とのやりくりに苦慮するようだ。これは、音楽市場は消費者が広く存在すること、美術市場は支持者を富裕層に依存しがちだからではないかとも思える。表現活動家が市場活動をどうとらえ、どう克服するかも主題の一つになろう。

 狂言師の茂山童司さんが、表現する仕事をするといっても普通のサラリーマンが仕事をするのとあまり変わらないといった「現実」を披露し、「一生を棒に振る覚悟」が必要といっている。そういいながら、そうした日常の中で独自の表現活動もしているのだと分かってやはり「いいな」と思わせる。

 CMプランナーの岡康道さんは、登場した人の中で53歳と年長であるからか、「ものを考える姿勢がしっかりする」といいと助言している。ビジネスの世界での「表現」について参考になる体験を書かれていて興味深かった。

 表現することを仕事にしたいとは考えていない人にも大いに参考になる本だ。画家の横尾美美さんが、「根気も才能の一つ」と語っているけれども、仕事をして暮らしていく上では大切なことだ。