なかでも「本と再販制」と題した章が、私のような不精ものには、ひじょうに参考になりました。再販制度の成り立ちや、出版流通の基本的な仕組み、それに再販問題検討小委による「中間報告」の内容と、それに対する業界の見解(反論)などが、ポイントをおさえてまとめられているため「論点」が見えてきます。また、最近の非再販本の販売取り組みや海外の事例なども紹介されています。
本当にお恥ずかしい話ですが、本書を読んでわかったのは、再販制度は、「決して小売店に対してメーカーの決めた価格で売ることを義務づけたものではない」ということです。この制度の主旨は、「たんに、メーカーが価格を守らせるために罰則などで小売店に圧力をかけても独占禁止法には違反しませんよ、といっているだけ」というものなのです。本書を読んで、今まで曖昧に理解していたものが、はっきり見えてきたというか、「そうなんだよね」という感じです。
実際、書店の外商部門では、大口顧客に対しては割引販売を行っているけど、この事実は「法律違反」でもなんでもない。業界も、この件は「暗黙の了解」というか、誰もその事に対して公に「再販違反」だから、その書店に対して「取引停止だ」などとは言っていないよな~。こんなことを考えていると、「なんだ再販制度はちゃんと弾力的、ないしはケースバイケースで運営されているではないか」とちょっと言ってみたくなりました。