録音がまた大変美しい。1709年製ストラディヴァリウスの名器「engleman」のひんやりとした透明感のある響きを見事にとらえている。このCDについて「現在の私が感じているバッハ=私なりの等身大のバッハ=ロマンチックな傾向をもった繊細で色彩豊かなバッハ」と渡辺玲子は謙虚に述べているが、ここに収められた演奏はけた違いの「本物」を感じさせる。バッハが没した250年後に、これほど素晴らしい演奏が、遠く離れた現代の日本で生まれたことを、心から喜びたい。(林田直樹)