ヴィヴァルディのバイオリン協奏曲から、今まで知られていなかった6曲を初めて収録した、驚愕のレコードである。これらの作品がなぜ知られていなかったかというと、いずれもヴィヴァルディが金持ちのパトロンから依頼されて作った自家用だからである。彼の円熟期に書かれたこの6曲は、大量生産的な趣きのある前期のコンチェルトとは、かなりスタイルが違う。一応は型どおりの3楽章構成で反復旋律も多いが、前期と比べると意外性があり、ドラマチックで、大胆である。ムード、特性、表現がいきなり変わって、鮮やかなコントラストを描き出す。形、ハーモニー、構造で思いきった冒険をしている。緩やかな楽章はうるおいに満ちて美しい。細部でも、全体でも、1つとして同じ効果の曲がない。まるでばらばらに聴こえる楽章は、炸裂するバイオリンが際立たせる多彩なモチーフのコラージュなのだ。
演奏も型破りである。ジュリアーノ・カルミニョーラは、これまでのヴィヴァルディ同様、自在さと活力と豊かな表現力で、名演奏を聴かせてくれる。急展開のソロ演奏では、しばしば最高音部まで登りつめる。トリル、ダブルストップ、アルペジオ、息を飲むスピードと技の切れ、自由で確かな弓の動きと明快なリズム、優美で力強く、変幻きわまりない音。ハープシコード以外の管絃楽器は通常の音程に合わせていて、ほとんどバロックには聴こえない。情熱的で変化に富んだ音である。指揮のアンドレーア・マルコンは2台のハープシコードと1丁のリュートで、銃声に似たパーカッション効果を作りだしている。豪華さと叙情と興奮が交々にやってくる演奏である。(Edith Eisler, Amazon.com)