フリーゼルは今作でも民族音楽の可能性を追求しているが、今作のそれはもっとスケールの大きなものだ。バンドメンバーを見てみると、ブラジル人ギタリストのヴィニシウス・カントゥアリア、彼といっしょにパーカッションを担当するマリ人のシディキ・カマラ、シアトル在住ながらギリシャとマケドニアの血を引くクリストス・ゴベタスはウードとブズキ担当、そしてスライドギターとペダル・スチール・ギターの達人グレッグ・リーズとバイオリン奏者ジェニー・シェインマンのアメリカ人2人という構成。
今作は、フリーゼルとマリ人ギタリスト・ブバカル・トラオレとジェリマディー・トゥンカラとのライヴでの共演がきっかけとなって実現した。世界のさまざまな言語出身のミュージシャンがフリーゼルのスタイルを取り入れて演奏している。全曲ともフリーゼルならではの色が出ているが、微妙に各ミュージシャンの個性の間で調和されている。曲によっては個人のカラーが前面に出ているものもある。マリ風スロー・ブルース「Boubacar」、ブラジリアン・ポップ「Procissao」「Perritos」(カントゥアリアのボーカル入り)、そしてゴベタスをフィチャーした「The Young Monk」「Yala」。フリーゼルはループを使って各曲をつないでおり、アルバム全体がひとつにつながることによって、魅力的な流れを作っている。(Martin Longley, Amazon.co.uk)