B面曲というものは、不当に低い評価を与えられることもあれば、そうでないこともあるが、ミュージシャンにとっては少々くだけた親しみやすい面を見せたり、どうしようもなく見当違いな実験に走ったりするためのものだ。みずからの最大のヒット曲をアシッド・ハウス・スタイルにリミックスし、アッカー・ビルクとセネガル人ドラマーたちをフィーチャーしてみたいといった長年の密かな野望も、B面でなら実行できる。ウェラーはそこまでハチャメチャをやったことはないが、なかなかの暴れっぷりなのだ――「Wild Wood」でポーティスヘッドが聴かせる「鍋釜ドラム・サウンド」は、今となっては少々古めかしいが、ウェラーのべストのひとつといえそうな曲を新鮮な切り口でとらえているし、「Kosmos(Lynch Mob Bonus Beats Remix)」は、さほど成功しているとはいえないが、まるで四方八方からアーケード・ゲーム機の音が押し寄せてくるかのようなサウンドに仕上がっている。
本作には大量のインスト曲が含まれている。ファンキーなグルーヴ、ワウワウ・ペダル、ヒステリックなサキソフォーンが満載だが、悲しいかな、きれいにまとまっているチューンはほとんどない。しかし、これらの埋め合わせとして、アルバムに収録されていてもおかしくないようなソング・ナンバーがたっぷりある。また、ほかのアーティストからの影響を隠そうとしないウェラーらしく(ここは見方によって彼の長所ともアキレス腱とも取れる)、3枚目のディスクにはジョン・レノン、ビートルズ、ソニー・ボノ、ボブ・ディラン、ティム・ハーディン、ニール・ヤングのカヴァー・ヴァージョンを収録。彼らへの敬意にあふれた演奏で、全体的にオリジナルよりロック度がアップしている。すべてのウェラー・ファンにとって聴きごたえ充分な内容だ。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)