6年間にわたる1000以上のブランド研究の結果、導き出された成功の法則を、豊富な事例とともにまとめた1冊。著者らによると、増え続けるブランドに減り続ける消費者、ブランドの同質化と価格競争、情報過多といった3つの要素により、多くのマーケターは苦悩を抱えている。だが、一方で、著者らが焦点を当てたいくつかの上位ブランドは、毎年2桁成長を続けているのである。
では、こうした上位ブランドに共通する点は一体何なのか。本書には、まさにその答えが記されている。分析の際、著者らがこだわったのは、「何が消費者の購買を動機付けるのか」という視点である。著者らによると、「強力ブランドは、消費者の購買動機を刺激する一定の法則に従って」おり、「これらの法則は普遍的であり、どんな市場の商品やサービスにも適用が可能」なのだという。
本の構成は極めてシンプルである。「便益」「規範」「認識」「アイデンティティ」「感情」といった購買動機に基づく5つのポータルを紹介し、その後それぞれの内容を、事例とともに掘り下げている。高級ブランドよりも安価でかつ、しわの予防効果が高いスキンケア商品が、結果的に高級ブランドの優位を崩せなかったケースなど、人間の非合理的な行動を裏付ける事例が数多く取りあげられている。消費者の不安や既存イメージを利用する手法など、なかには広く知られている手法もあるが、豊富で読み応えのある事例がそれを補って余りある。
ナイキ、コカコーラ、ホールマークなどの超有名ブランド、国や観光地のプロモーション、社会キャンペーンなど、さまざまな事例を読み進めていくうちに、消費者の購買動機について、認識が深まることだろう。マーケターは必読の1冊である。(土井英司)
どの法則を使うのかは、顧客理解とマーケティング・センスが必要
★★★★☆
本書を読めば、ブランディングやマーケティング戦略はことごとく上手く行く魔法の本のように書かれていますが、この法則を利用して実践することは難しいと思います。本書には5つのポータルに28の法則が紹介されていますが、問題は自分の商品にどの法則を当てはめ、どれと組み合わせるかということがキモとなります。本書で「保湿クリーム」の事例が紹介されていますが、この商品はターゲットを30歳以上の女性というテリトリーを独占することにより消費者に認知させることに成功しました。この30歳以上の女性というセグメントにフォーカスすることは、それ以外の市場を放棄することになります。この決断をするには綿密な市場調査や定性調査のプロセスがあったことはいうまでもありませんが、そこまで本書は言及していません。
じゃ、本書はインチキなのかというとそれも正しくはないでしょう。市場(顧客)を理解し、市場の部分を捨てる勇気を持ち、それで採算が取れるという見込みがあればこの法則を使ってブランディングすることが可能だと思います。それに必要なマーケティングと広告の知識は前提として説明されていないので、お手軽なHow to 本に見えますが、実は奥の深い書籍なのだと思います。最後には経験とセンスがものをいう属人的な世界なのではと思いました。だからこそ筆者は惜しげもなく自分の持ち駒を披露しているのではないでしょうか。
具体例豊富な入門書
★★★★☆
増え続けるブランド、情報過多、競争によるブランドの同質化。頑張れば頑張る程に埋もれてしまいかねない厳しい競争環境が故に、どのように消費者の購買心理をうまく刺激できるかが重要だと筆者は説きはじめる。それでは、どうすれば消費者の心の琴線に触れることができるのか? この明確に設定された課題に答えるのが本書。
消費者に訴求するテーマを5つに分け(ポータル)、一つ一つのテーマにつきどのように効果的に訴求するか、複数のアプローチ(法則)が丁寧に解説されている。例えば、ポータルの一つである「便益」を訴求する場合、単純に機能上の便益を声高に叫ぶのではなく、「消費者の優先度の高い興味関心」にひっかけて訴求(法則1)してみたり、「日々の生活において消費者が感じる不安」にひっかけて訴求(法則2)する方が効果的である、や、また別のポータル「規範」という切り口で攻める場合、消費者が潜在的に感じている「罪悪感」を解消する(法則7)もしくは「自尊心」をくすぐる(法則8)形でブランドを結び付けると成功しやすい等。これら一つ一つの法則が、具体的な事例を以て解説されているので理解しやすく、頭も整理されていく。
尚、本書は、あくまでも既存のブランドが競争に晒されたとき、または市場全体が競争過多で沈んでいるときに、商品の中身自体を変えることなく、どのように巧く身を翻して(プロモーション方法を捻って)攻勢に転じるかというものであり、市場をどのようにセグメントしどのようなポジションを取るか、というどちらかと言えば商品戦略論や開発段階のマーケティングを語るものではない。そのような内容を期待されて購入すると期待はずれに終わると思う。
非常に分かりやすく勉強になった本だが、やや冗長な説明を簡潔にして、その分具体例がもう少し深く描写されていれば尚良かったと思う。また、あるシチュエーションにおいて、なぜ一見似ているあの法則ではなくこの法則を適用するのかという、選択の際の思考プロセスが解説されていれば更に良かったとも感じた。
危険な本だ
★★★★★
この本は購買心理をうまく利用し、売れない商品でも売れるようにしてしまうノウハウが詰まっている。
非常にマーケティングの本としては良い本だが、ある意味、消費者にとっては危険な本かもしれない。特に強いライバルを引き落とす戦略まで含まれている点が、でも消費者心理は簡単に変化させることができるのかも知れない。
本自体は、「便益」「規範」「認識」「アイアンディティ」「感情」の5つのポータルに分け、その効用、利用法を説明している。
それぞれ具体的な実例が紹介されているので、非常に理解しやすい。
ただ、海外の事例ばかりなのでちょっとピンとこなかったのが、残念。この本の訳者が、広告代理店の人なので、日本版の本を期待したいところだ。
ブランド価値の考え方枠組み
★★★★☆
基本的なブランドの価値構築/評価において、網羅的な
考え方の枠組みを提供してくれます。
具体的にブランド構築のための作業ステップやアクションと
いったレベルまでは踏み込んでませんが、この一冊を
ブランド入門書と位置付ければ、充分だと思います。
ブランドの分かり易いタイプ分析
★★★☆☆
ブランドがどのような心理要素でサポートされているかを
分かり易く理解することが出来ます。
ただ、実務担当者としてはもう一歩すすんで、どのような
具体ステップを踏んでブランド戦略構築・計画立案まで
ブレイクダウンしていくのか?までを読み解けなかったのが
残念。まずブランドを語る前に理解しておくと話が早く進むと
思われます。入門書としてお勧め。