この例文こそが、単なるおまけではなく、もっとも役に立つ部分だと思う。中途半端な熟語でなく、完結した文章なところがえらい。例文が豊富で、ちょこっと単語を入れ替えたりすれば、書きたい文章は全て書けるといって過言ではない。むろん、自己流に応用を重ねた文が、フランス語として自然か、心もとないところもあるが、何も書かないよりマシだろう。
コラムが充実している。「ある」のように日本語での使用頻度が高くかつ多義的な場合、存在、位置、所有などの日本語の意味に対応する単語のみの一覧表が、項目説明の先頭に置かれる。ちょっと確認したいだけのとき、字の小さな各論部分に目を通す手間が省ける。
また、「クジラ」を引けば、ナガスクジラ、マッコウクジラなどという関連単語のコラム、といった感じだ。
重要動詞の活用パターン、日常会話の常套句もコラムになっている。さらに、「いいですよ」のような微妙な表現は、1頁ぐらい割いたコラムで丁寧に説明してある。
コラムコラムと強調してきたが、要するに、均等な字がのっぺり並ぶ編集よりは、はるかにページレイアウトに変化があって見やすいのである。
巻末には動詞変化表も付録としてつく。まあ、これは標準スペックといえるだろう。
ただ、この和仏で、フランス語の表現を全てカバーできるわけではなさそうだ。この辞書の単語や言い回しは、新聞などとは重なっているようだが、文学作品では実に多様な単語、言い回しが使われており、それはそれとして学ぶ必要があると思う。