本書には、特有の形と雰囲気、そして鮮やかさとがある。読者との対話、彼に関わる人や場所、出来事の物語。風変わりな家族の色鮮やかなエピソード。母親と母方の祖父から受けた多大な影響の数々。熟練したジャーナリストとして頂点をきわめたこと、彼を励ました友人や師たちのこと。マルケスが愛するコロンビアの神話と謎。そして、後に小説のなかに形を変え、位置を変えて立ち現れる、今まで明らかにされていなかった個人的なディティール。作家になりたいという何よりも強烈な欲望。小説と同じように、物語を語るのは現実世界の直感的な観察者だ。だが小説とは異なり、本書で明らかにされるのは彼自身の人生の中心に潜む感情と情熱である。
『Living to Tell the Tale』は、輝かしく力に満ちあふれ、読者を楽しませる回顧録である。作家として、人としてのガルシア・マルケスの成り立ちを教えてくれる。