非常に個人的なレビューです
★★★★★
私が大学を卒業したばかりで右も左もわからず(今でもわかっていないというご指摘はごもっとも)、社会人として日本映像記録センターといういってみれば梁山泊のようなドキュメンタリー制作会社で、最初にアシスタントとしてついたのが、この本の著者の市岡康子さんでした。市岡さんはすでに私が入った時にはベテランディレクターでしたから、もうなんというか雲の上の存在でした。最初にご一緒させていただいたのはニューギニアの現場でした。
大体私は飛行機で海外に行ったはそれがはじめて(学生の時、船でグアムに行ったことはあったのですが)、で、もう最初から最後まで非常に足手まといになったことと思います。カメラマンの人に怒られてニューギニアの満天の星の下で涙を流したこともありました。この本はそんな市岡さんがその代表作を作成された「ドキュメンタリー制作のドキュメンタリー」です。そうだったのかあ、市岡さんもこんなに悩んでいたんだ、ということが初めて実感として理解できました。そして映像記録センターの牛山代表とのやりとり。牛山さんと市岡さんとの間の信頼関係が手にとるようにわかります。この本は誰にでもお勧めできる類のものではないのかも知れませんが、個人的に感慨深いものです。まだ30代の市岡さんの写真も個人的には思わずにんまりです。
そして読めば読むほど、私はまだまだだなあ、と深いため息をついてしまうのです。巻末にある、膨大な資料。そうか、仕事っていうのはこういうことをきちんと積み重ねていくのだ、という当たり前のことを再認識させてくれます。
私が市岡さんとご一緒させていただいたのは1980年代後半のほんの3年半ほどですが、近年、久し振りにお会いしたときにもちゃんと覚えていてくださってとてもやさしい言葉をかけていただきました。ほんとうにありがたいことです。