台湾でトップクラスの人気をもつアーティスト、ワン・リーホンの日本デビュー盤。これまでに台湾で発表した作品からセレクトされた、ベスト盤的な内容になっている。彼の音楽とは甘くせつないヴォーカルと、王道的ポップスでありつつ時代性を取り入れた幅広い音楽性が特徴といえる。本作のメインとなるバラードの「たった一人の君へ」はファルセットを巧みに使い、流麗な発声でスケール感豊かに歌い上げているし、デジタル・ロック的な「ライク・ア・ガン・ショット」ではラップも織り込んだ野性味あふれる声を聴かせ、「ラスト・ナイト」ではアコースティック・ギター1本でウィスパー・ヴォイスを披露。また、女性シンガーのララ・ファビアンとのデュエット曲や、ヴァイオリン奏者の葉加瀬太郎が参加した曲もあり、曲ごとにさまざまなアプローチを見せている。彼の多様な魅力が詰まった作品だ。（小山 守）