楽しいけれど誤植だらけ
★★★☆☆
東京書籍は出版社としても書店としても、こだわりのある丁寧な仕事をする会社だと思っていましたが、この本(2006年の初版第1刷)の誤植、誤記、固有名詞の表記の整合性の無さはあまりに酷いです。スメタナに関する僅か1ページのコラムの中だけで少なくとも2箇所も。著者も編集者も校正をしなかったのでしょうか?
他の「プラハ本」には無い細かな情報や美麗な写真が豊富であるなど十分に存在意義のある本なのに(名所の入場方法等、最新の観光ガイドにも記載されていない有益な情報もあります)、「どうやってそこへ行くか」についての説明が読み物的というか不親切というか・・・しかも上述のように誤植が多いので番地が明らかに間違っていることもあります。せっかく他の著者とは違う角度からプラハの魅力を紹介しているのに、データ的な部分で誤記・誤植があるとかえって旅行者を混乱させ異国の地で迷子にさせかねません。
とはいえ、建物を飾る魅力的な標識について、文章、図版ともにここまで詳しく分かりやすく紹介しているのはこの本だけではないかと思います。また、大使館や銀行、官公庁など一般旅行者が敬遠しがちな建造物の由来やチャームポイントについても言及し可能な範囲で撮影しているの著者の熱意は敬服に値します(大使館や銀行は保安上の理由から撮影が厳しいですから・・・)。
きちんと校正をし、不親切な記述とあまりに大雑把な地図を改良した状態で重版されれば、非常に楽しい美しい書物になると思います。
写真が楽しい、そして実際役に立つ
★★★★★
いろいろ出版されているプラハ本の中でも、一番のお気に入りです。
なんと言ってもカラー写真の点数が豊富。
建築物の写真数は、他のプラハ本とはケタ違いに感じます。
観光名所以外の、趣深い建物が写真で紹介されています。
プラハ名物の標識にしても、多数並べて紹介してあります。
建築好きで、これからプラハに旅行される方なら必見です。
実際プラハに行った時、この本に掲載されていた、おもしろい建物をいくつか偶然に発見し、
写真に収めることができました。読まずにいたら、気付かず通り過ぎるような建物です。
この本のおかげで、数割増しに楽しいプラハ観光になりました。
路地裏探検
★★★★☆
建物の装飾や路地裏など、プラハを訪れた際、何気なく見過ごしてしまいそうな部分にスポットをあて、写真のアングルや構図にもこだわりを持った、女性らしい細やかなセンスが感じられて良かったと思いました。アール・ヌーヴォーやアール・デコ様式の建築物は、パリやウィーンとは違った大胆さ繊細が混在した魅力にあふれた外観が素晴らしく、キュビズム建築では、「黒いマドンナの家」の階段が幻惑を起こさせる姿をぜひ自分の目で確かめてみたい気がしました。また、その昔、住所を示す番地の代わりとなったレリーフや彫像の標識は、蛙、羊、ライオン、白鳥、ザリガニ、薔薇、メロンなどの動植物系から、ヴァイオリン、天秤、鍵、斧など多彩でユニークなモチーフがかわいらしく、日本大使館の菊の御紋章が、違和感なく周囲に溶け込んでいるのも嬉しい気がしました。もちろん、プラハ城、カレル橋、ユダヤ人街などの名所の他に、ムハ(ミュシャ)、カフカ、スメタナなどのプラハとゆかりのある芸術家たちのこともきちんと押さえているので、初めてプラハを訪れる人も、何度目かの人にも新しい発見があると思う内容は良かったのですが、裏道や抜け道などは、文章だけでなく、地図上に場所を細かく示してくれるような工夫があればもっと重宝したのではないかと思いました。あと、細かいことですが、年号の誤記が散見し、残念な気もしました。