著者は76年よりスウェーデン在住の、ストックホルム大福祉学部の学者さんです。そこで著者のお仕事場や福祉にまつわるテーマも描かれていますし、もっと多くの部分がその社会や風俗や人や自然の描写に充てられています。
その穏やかで思いやりのある筆致も胸に染みるのですが、細かく言うと活字の字体を含めたデザインがまた素晴らしい。
教科書体?というのか、細く滑らかな明朝系の活字は、前に出て強く自己主張せず、ページの白い部分(真っ白ではなく、画用紙系の黄味がかった白)の中に美しく収まっており、淡々とした著者の文章にふさわしく、また人が「ひとを恋うよりも、自然を恋う」というスウェーデンの「寂寥感」のようなものをさえ感じさせる、内容と非常にマッチしたデザインであると思います。
水彩やペン画をベースとしたこれまた美しい多数のイラストを交え、いわば八十何回かめくられる見開きのひとつひとつが(余白+文章+イラストで)一幅の美しいアートを作っているような、稀有な作品だと思います。
(イラストが主体という訳ではありません。あくまで主体は文章で「読む本」ですが、デザインの凝り方が素晴らしい、のです。)
現在どうやら本屋さんでは並んでいないらしい、というのは残念ですが、私個人にとっては一生ものの本となりました。上に挙げたようなキーワードに反応された方は、ぜひお手にとられることをお勧めします。
すばらしい感想の数々。嘘じゃありません。(実際手にとってオビをご確認ください。)イラストも絶品なんです。スウェーデン・ファンの皆様、ぜひ、この感動を味わってください。