異邦人気分でページをめくりました
★★★★☆
1905年から1906年の1年半の期間をかけて世界を旅してまわったドイツ青年のワルデマール・アベグが撮った117点の写真と、彼が80歳を超えてから若き日の旅の思い出を綴った回想録を元に、ボリス・マルタンが解説を施した本で100年前の世界がここに収められています。
当時の日本の姿も興味深いですが、アメリカ・ニューヨーク、シカゴ、グランド・キャニオン、朝鮮のソウル、中国(清)の北京、漢口、上海、インドのバラナシの人々の表情や服装、街の景観に目を奪われます。タージマハル、アクバル帝の廟などの観光地もさることながら、何気ない街に佇む人々の姿にワルデマール同様、興味を覚えました。
本書の中心を占める100年前の日本はまさしく「不思議に満ちた世界」でした。ガラス版の写真原版に彩色された写真は、見たことのない古き日本にタイムスリップしたかのような喜びが得られました。東京の風景からも異国情緒が漂います。外国人から見た東洋の神秘・日本のイメージ通りの写真が続きますが、現代人にとってもエトランゼ気分で眺められるように思いました。
別府の2人の芸者の写真が表紙を飾っています。ワルデマールは殊のほか、彼女たちのことを気に入り、生涯自分の机上にこの写真を飾っていたとのことでした。
おいらん道中の写真は貴重ですし、富士山を背景にした写真は今も昔も変わらない見事な景観を披露しています。146ページの見開きの写真はまさしく浮世絵で描かれる日本でした。
朝鮮の独特のつばの広い帽子をかぶった白い衣装の人々や、辮髪を結い、特有の服装で歩く清の人々などは映画でしか見ることのできない雰囲気が漂っています。
186ページの上海の茶館と紹介されているのは豫園ですね。今も変わらない景観がそこにありました。