陰陽論の深まり
★★★★☆
哲学界では一元論を目指して来た。このため陰陽論は思想の片隅に追いやられて久しい。しかし、この宇宙が物質と反物質、粒子と反粒子で出来上がっていることは現代量子物理学の常識となっている。人智の及ぶ範囲は二元論であると言える。このような時期、陰陽論に視座を据えたことは活眼である。この書の注目すべき点は、陰陽論を具体的レベルに引き摺り出し、かつ、本質を射抜いていることである。このため、従来の看法に頼らなくとも、陰陽論を愚直に展開するだけで多くの推察が可能になった。陰陽論の深まりだと指摘できる。著者の並々ならぬ造詣の深さがなければ到底為しえないことであろう。人間観察の武器として、また、鑑定上のゆるぎない武器として、多くの人がこの書を活用されることを期待したい。是非、一読をお勧めする。