良いマンションの条件は、間取り、設備、構造、立地といった建物自体のスペックもさることながら、商品企画がしっかりしていることがいちばん大切である、という。
全ての人を満足させられる物件などありえるはずもない。だが売れ残ると大変だから、業者はあの手この手で誰にでも売ろうとする。ここが悲劇の始まりである。資金計画が危なっかしいのに金利を安く見せかけて売るのは論外だが、とてもニーズにあいそうもない客にまで、良い点だけを強調して売り込む。ウソはないが誠意もない。
本書には、こういう売り方をするセールスマンの特徴がチェックリストになっているが、まさに、全く同じパターンの販売員に実際に出くわして驚いた。
一方で、こんな業者もいた。
「この物件は、若い夫婦が子育てをするのに最適な設計にした。駅からやや距離があるので、賃貸や転売を考えているのであれば勧めない」
商品企画がしっかりしているとは、こういうことをいうのであろう。ちなみに、この業者の物件を本書のチェックリストで全てチェックしてみたが、ベストとされる建材、内装ばかりではなかった。しかし若夫婦が無理なく買える値段に抑える、というのも立派な設計思想である。ただ漫然と豪華な内装にするよりは、よほど筋が通っているし、選びやすい。
こう見てくると、マンション選びでは、業者の良し悪しだけではなく、自分自身のライフスタイルがしっかりしているかも問われるようである。その意味では本書のチェックリストもそれが全てではない。自分の人生観にあわせた取捨選択があってしかるべきである。一生にそう何度もない大きな買い物であるから、そのあたりにも注意を払いつつ、悔いのない物件選びに活用したい。
モデルルームでのチェック事項から、契約、内覧会、資金計画まで、情報量も充分多く、具体的な数字が示されているので、本当に役に立つ本だと思います。