演習と実例によって、標準的な考え方が無理なく身に付く
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PMBOKは、プロジェクトマネジメントの標準化された知識体系です。
これは標準化されているが故に、どうしても膨大かつ教科書的な内容になってしまいます。
現場で実際にプロジェクトを動かしているマネージャーやリーダーの中には、
「うちはアジャイル(or 短納期 or ...)だから」と距離を置いている人もまだ多いと思います。
そういった人にこそ、本書をお薦めします。
本書では、プロジェクトマネジメントを演習と実例(ケーススタディ)によって順を追って説明しています。
大学の先生の書いた教科書の演習問題は難しくて手間が掛かるだけという印象を私は持っていましたが、
本書についてはその認識は当てはまりませんでした。
私の場合、本書を読み進める上で実際に手を動かして演習問題を解くことが理解の助けになりました。
例えば、本書にはPMBOKの5つのプロセス群と9つの知識エリアでマトリクスを記述するという練習問題があります。
この練習問題で実際に手を動かして記述したマトリクスは、以降のPMBOKに関する説明を理解する上で
全体像の俯瞰するために何度も見返すことになりました。
システム開発者必携の書
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プロジェクトマネジメントという極めてアメリカ的な概念は、日本人が最も不得意とする分野の一つかもしれない。その不得意感のさいたるものが、PMBOKやWBSといった、標準化のためのキーワードだ。とかく日本という国土は、単一民族で歴史が作られてきた経緯もあり、また宗教的にも(神との契約に基づいた「言葉」を重視するアメリカのキリスト教社会に対し、禅や念仏といった「心」や山岳・巨木に柏手を打つ「精神」を重視する日本の仏教・神道社会)、物事において徹底した標準化は必要なかった。
そういった土壌にあっても、いまやオフショア開発や大規模開発における標準化の必要性から、昨今ではプロジェクトマネジメントのメソッドを知り、使うことが、現場で欠かすことのできないスキルとなった。
本書では、システム開発において日本のプロジェクトマネージャとなる人物が持つ苦手意識を解くように、さまざまな工夫がなされている。タイトルにあるように、演習と実例が豊富に取り上げられており、各節のラストには必ず演習が掲載されている。監修者も含めて7人のメンバーで執筆されているからか、広い範囲で、現場で起こった事例から作られた数々の演習問題に、密度の高さを感じる。
ページ数の割に本の重量が軽く、持ち運びに嬉しい。また、机上で読む際には閉じづらく、ぱらりと開いてくれるのもまたよい。内容・体裁ともに、教科書として何度も何度も繰り返し読むための配慮がなされているところに好感が持てた。
本文は330ページほどのものであるが、演習問題を解き、理解を確認しながらじっくり読み進めると、読了までゆうに10日はかかる。オビに「PMP受験のサブテキストとしても最適」とあるが、この本を何度も読み、頭の中にたたき込むことで、プロジェクトマネージャとしての知識がかなりつく。