教科書・解説書というより、あくまでも「解答例」
★★☆☆☆
本書はあくまでも著者の「解答例」としてとらえるべきです。
つまり、「解答例」は、決して「正解」であるとは限りません。
というのは、「試験センターからの解答の要点」を殆ど無視し、著者の解答に対する解説というスタイルを貫いているためです。
下記に一例を挙げます。
平成16年度午後1問4、旅行業の販売促進策の事例において、
設問1では、明らかにRFM分析を切り口にした解答を求めてます。
これは、ある程度経営戦略に知識がある者にとっては設問を読んですぐにピンと来ることでしょう。
「試験センターからの解答の要点」は下記のように示されてます。
「RFM(最近、多頻度、高額)のそれぞれについて、適切に記述していること」
しかし、著者は「RFM分析だけで、ここで問われている事象を満足する解答が得られるか不安」と否定し、「旅行歴」「感想」「好み」と定性的な切り口を挙げてます。
設問が求める「科学的分析手法」とも矛盾します。
おそらく、0点でしょう。
余談ですが、知人のある有名コンサルタントが
「答えは全て経営者の中にある。我々コンサルタントは答えを提示せずに経営者を肯定し主役にすることだ」
と語ってました。
つまり、顧客である経営者の考えを否定して独自の理論を展開することは、コンサルタントとして顧客の信頼を失うことにつながるということです。
それなりに勉強して知識を得たシステムアナリストが陥りがちな失敗といえるでしょう。
試験においても同じで、出題者(=顧客、経営者)が求める解答を否定しては、出題者に得点を頂くことはできません。
あくまでも出題者の考えや気持ちを察知して、求める方向に強く導いてあげる解答を書き上げることです。
本書は、教科書・解説書としてとらえると、星1つすらも評価できませんが、あくまでも「解答例」として、つまり受験者のひとりの思考プロセスの参考のために星2つとしました(ちょっと甘い採点)。
辛口なレビュー結果とさせて頂きました。
★★☆☆☆
私は、これまで幾つかの情報処理技術者試験で、「翔泳社の情報処理教科書」で勉強することで合格しました(プロマネ、アプリ、システム管理等)。
その為、翔泳社の情報処理教科書を高く評価しています。
しかし、本書では首を傾げる箇所が3点あり、辛口なレビュー結果とさせて頂きました。
◆首を傾げた箇所
1.午後2論文例が多数掲載されているが、各論文が合格のレベルなのかどうか明示されていない。
2.午後1問題演習に於いて、筆者の解答例が、「試験センターによる解答例/解答の要点」からかけ離れていると感じるケースが多くある。
3.(細かいことだが、)午後2における「論述の対象とするシステムの概要」のアンケート内容が記載されていない。
もちろん、「過去問題が、分野別に多数掲載されている」「午後1、2について、H10年以降のテーマが一覧されている」など、とても嬉しい内容も多く記載されています。
そもそもアナリスト受験者は、これまで幾つかの試験を突破しているか、それ相当の実力を有していると考えられるので、この内容で十分かもしれません。しかし、翔泳社びいきな私が、他の本と比較して感じた「3点の首を傾げた箇所」は、他読者にも参考になると考え、あえて辛口に評価させて頂きました。