虚実のクロスオーバー
★★★★☆
黄金時代の欧米探偵小説風の作中作『グラン・ギニョール城』が展開されるパートと、
その小説にまつわる謎を解こうとする弁護士・森江春策のパートが交互に展開される
メタミステリ。
作中作が、徐々に作中現実を浸食していき、ついには虚実が劇的なクロスオーバーを
遂げる――という本作の趣向は、一見アナクロな風格の中に、ラディカルな実験精神を
内在させていく著者の作風を如実に表しているといえます。
作中作と作中現実、それぞれで起きる事件の解決には、ご都合主義的な点がいくつか
見受けられ、作品全体としては、大味な印象は否めませんが、著者の〈物語〉への熱い
想いには、圧倒させられてしまいます。
物語の魅力
★★★★☆
2001年に原書房から出た単行本の文庫化。
森江シリーズの一冊。
現実世界と小説内世界が次第に融合していくような、いかにもな芦辺作品。きちんと最後に辻褄が合うし、ミステリとしての魅力も十分。かなり完成度の高い一冊と思う。
それにしても、アイデアがすごい。よくこんなこと考えつくなあと感心させられる。プロットの冴え、練り込まれた筋書き。ちょっとでも詳しく書こうとすると、すぐネタを割ってしまいそうになるほどだ。
とにかく読んで欲しい一冊。
狙いは成功、トリックは薄目
★★★★☆
野心作であり、その狙いは成功していると思います(詳細は読んでからのお楽しみということで。)。後書きに示された作者の執筆動機にも、強く賛同します。但しトリックそのものは若干薄味です。それから一点疑問が。物語の中盤以降、客観的には極めて危険な状況に身を置く森江(犯人にとってはさぞや怪しい存在であったはずです。)は、なぜ全く無事でいられたのでしょうか。少し設定を加えるだけで解決できましょう。着想を作品化することを重視する余り、筆を急いだのでしょうか。
面白いが、、、
★★★★☆
よく考えられた構成であり、
強引な展開もないではないが、
それでも納得でき、楽しくよめた。
ただ、後の展開や真相がすぐ読めちゃうのは、
どうなんだろうとも感じた。
意外な展開に息をのむ
★★★★☆
偶然に手にした作品でしたが、読後は大満足でした。
架空の世界と現実の世界が交互に展開していき、最後に行き着く先には意外な真相が待ち受けています。妖しいグラン・ギニョール的な魅力にすっかり引き込まれてしまう作品です。あっ、と驚くような体験をしたい方はぜひ、読んで下さい。お勧めです。