このように、著者の視線は自在に、私たちがこれまで知り得なかった感覚、感性を教えてくれる。これからこの視線を頼りに、絵画やアートを見直してみると新たな発見ができるのではないか。この本を読み終わってそう思った。
人間は結局、自然とともに、地に足をつけて生きていかねばならない。また、自然に対して常に謙虚に素直な姿勢で望まねば見えるものも見えなくなる。こうした著者の姿勢が「林檎の礼拝堂」、風!景芸術の根底にあると感じとれる一冊だ。
もともと(ぼく個人的には怪しげなイメージのある)「現代美術」からスタートした田窪さんがなぜフランスの片田舎の荒れ果てた礼拝堂を修復するために長い年月を費やすことになったのか。そして、ぼくらがこの礼拝堂に興味を惹かれるのはなぜか。美術館や美術展や美術家のアトリエなど、様々な美術の「現場」をめぐる、一見とりとめもない随想から、こういった疑問に対する答えがかすかに顔をのぞかせてゆく。
なんでも今、田窪さんは金毘羅山の再生プロジェクトに取り組んでるんだそうだけど、早くその成果を見てみたい。