戯言か崇高な思想か?
★★★★☆
北欧ノルウェーで発生した音楽としてのブラックメタルの成立過程、
ブラックメタルサークル事件の顛末及びその深層にある思想、宗教、精神性
それぞれの観点をリンクさせながらキリスト教圏での土着宗教の再興問題に
まで言及していく本書は、音楽を(言葉通り)音を楽しむ媒体としてのみ捉える
ことを拒絶し、一人のカリスマ(だと当人及び周辺人物は思っている)の心の
変遷を学術的観点から考察している。
異常なまでの早さ、シンフォニックなシンセサイザー、喚きまくるボーカル、
緻密に編み上げられた楽曲構成、白塗りメイク、陰鬱なアルバムアート
ブラックメタルとしてのイメージは他にも諸々あるだろうが、そこにプラスアルファ
として、製作者の怨念にも似た制作意図を感じながら改めてブラックメタルに向き合う
には最適な書。