もしハートマンがコルトレーンとの共演盤を作らなかったら、たぶん、その後のハートマンの音楽人生は、まったく別のものになっていたに違いない。コルトレーンとの共演後、インバルスでは『アイ・ジャスト・ドロップト・バイ・トゥ・セイ・ハロー』『ザ・ヴォイス・ザット・イズ!』を録音した。本作はそれらインパルス時代の録音を中心にしたベスト盤で、もちろんコルトレーンとの共演盤からも選曲されている。ハートマンが絶好調だった60年代の名唱ばかりで、特に胸にしみるバラードは絶品だ。(市川正二)