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カラヴァッジョ―聖性とヴィジョン―

価格: ¥5,184
カテゴリ: 単行本
ブランド: 名古屋大学出版会
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カラッヴァジョについての最良の案内書 ★★★★★
カラヴァッジョの絵のことを美術全集以外で初めて見たのは、デレク・ジャーマンの映画でだったと思う。正直なところ映画からは、暴力的な画家だったらしいということしかわからなかった。絵を見た限り、静物画はあくまでも静謐で宗教画は荘厳で感動的なまでの印象を受けるのに、映画は死体をモデルにしただの同性愛者だの殺人者だのといった過激なエピソードに終止しただけで、この画家と作品について理解が深まることはまったくなかった。また5年程前ローマ旅行をした際に、カラヴァッジョの作品を数多く目にした。その感動を胸に図書館や書店で、この画家についての本を探したがほとんど見つけることができなかった。がっかりしてカラヴァッジョのことは忘れかけていたときに、この本を知り購入した。
まず、カラヴァッジョ研究の欧米での層の厚さと、それを紹介しながらも独自の視点を展開する筆者の力量に舌を巻いた。筆者によると反宗教改革期のイタリアで、リアリズム的な表現をとることで、日常の光景にキリストや聖人たちのエピソードがたちあらわれるという宗教的な幻視の表現を実現したのがカラヴァッジョであったらしい。また血みどろの伝記的エピソードは、画業と格闘しながらも宗教的な救いを必死に求めた画家の軌跡であり、その作品から感じる荘厳さと深く結び付けて理解すべきものであるという。カラヴァッジョの作品の本質を見すえる筆者の姿勢に、印象批評的な安易さは全くない。
また緻密な論理構成ながらもその展開にはひき込まれるし、文章は平易で読みやすい。衒学的ないやらしさが全くなく、真に優れた研究は私のような部外者が読んでもわかりやすいものだとわかった。帯によると、これが日本で初のカラヴァッジョの研究書であるという。これほどまでに偉大な画家についての書物が日本になかったことにまず驚くが、初の試みでここまでの成果を出した筆者の技量が並外れたものであることが推し量られる。
カラヴァッジョに心惹かれたことのある人のみならず、イタリア美術、西洋美術、いや美術に関心のある人すべてにとっての必読書だと思う。購入をぜひおすすめしたい。