曾我蕭白 異端、奔放、大胆 その画業の全て
★★★★☆
京都国立博物館で開催された「曽我蕭白展」での土曜講座において、近世日本絵画研究者の狩野博幸氏(現在は同志社大学文化情報学部教授)が講演された内容をテープ起こしたもの。実際に同展覧会を企画した人ですから、その深い洞察力に裏付けられた解説は知的好奇心をくすぐるものです。曾我蕭白の作品を理解する上で避けては通れない書物だと思います。
その解説にもありますが、曾我蕭白がとても力量のある絵師であるのはすぐに理解できました。多分、時代が彼を評価できないまま今日まできたのでしょう。
江戸時代の評価は「曾我蕭白 世人狂人を以て目す 其絵変幻自在なり」とあり、ある見解では「蕭白の絵を評価しようとする者は、悪趣味の烙印を押されかねなかった」とまで言われていた絵師を再認識するのに本書はとても有用でしょう。
また、別の見解では「生前の評価は京都で活躍する絵師の評価を推測するのに有効な資料『平安人物誌(安永4年版)』には、応挙、若冲とともに名を連ねるところから、京都では相当の画力の持ち主と評価されている」と書かれていますので、低い評価は戦前の日本画壇の評価軸の傾きによるものでしょう。
若くして、次々と両親を亡くし、兄を亡くし、幼い妹と生きていかねばならなくなった蕭白の心中を思えば「異端」の絵画を描くのも理解できます。また、後に長男まで亡くしてしまうわけです。淋しい生涯でしたね。京都を離れ、伊勢と播州を転々とし、また京に戻り、酒におぼれ52歳でこの世を去りました。心の隙間を画作で埋めることでバランスを取っていたのかもしれません。
異端は時代を越えて鮮烈な光を放っています。