近年発見された永徳の「洛外名所遊楽図屏風」の魅力の全て
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足利家の御用絵師だった狩野派のまさに頂点ともいうべき永徳は、そのスケールの大きさでみても安土桃山文化の特徴である絢爛豪華な装飾芸術の頂点を極めた人でありました。
永徳筆として近年認められた4曲1双「洛外名所遊楽図屏風」を発見した狩野博幸同志社大学教授の著書です。永徳も含めて多くの近世絵画に造詣の深い筆者の解説が詳しくてとても勉強になりました。60頁というボリュームで丁寧に紹介され、分析された「洛外名所遊楽図屏風」で描かれている宇治の平等院や嵐山の描写を眺めながら、永徳の描写力の見事さに驚いています。狩野永徳の20歳過ぎの作品だと言われていますが、まさしく早熟の天才という感じです。
米沢市上杉美術館が所蔵している有名な国宝「洛中洛外図屏風」も22頁にわたって、それぞれのシーンの一つ一つに狩野氏の丁寧な解説がつけられています。約2500人もの人が描かれ、京都の様々なお寺や名所、祇園祭や当時の庶民の生活がとても精緻な絵で描かれています。戦国の世における洛中や洛外の風景描写が映し出されており、我が国の至宝と言えるでしょう。
雄大な6曲1隻「唐獅子図屏風」も114頁で取り上げられており、興味深い解説がなされています。永徳の気迫が直接伝わるような2匹の獅子ですね。
118頁には、永徳最晩年の8曲1隻の国宝「檜図屏風」が掲載されています。これはまさしく「怪々奇々」でした。遠近感を無視した現代絵画に通ずる大胆な構図で、そのデフォルメされた枝のうねりが戦国という騒乱の世の姿を象徴しているように感じ取りました。
破天荒とでもいうべき豪快さを身につけた天才絵師の素晴らしさを堪能できる書籍だと思います。