がっかり
★☆☆☆☆
プライス・コレクションの展覧会も2回行きましたが、若冲が描いたというサインのある葡萄や虎や鶏などの絵と、この「鳥獣花木図」の屏風とが、同じ人によって描かれたとは信じられません。この屏風には若冲のサインやハンコがあるわけではないし、何かの証明書があるわけでもないので、どうして若冲の作品といえるのか不思議です。堂々とタイトルにも若冲の名前が記されている本なのですが、結局この絵を若冲が描いたんだということについてのちゃんとした説明は書かれていません。
そんなことは気にしないで図版だけ見るなら図版はきれいです。部分図の図版がたくさんあって、まんなかにとても短い文章があって、また図版がたくさん。値段はちょっと高いと思います。
生き物共生の理想郷を描いた作品か
★★★★★
これが江戸時代の作品かと疑いたくなるモダンさ。デジタルにコンピュータ処理でもしているのかと思わせる「升目処理」に驚かされる。一つ一つ絵の具を充填して描いていったのだから、根気の要る仕事であったと思う。
描かれている動植物は何十種類か、鶴や鶏などごく少数のものを除けば、日本では見ることのできない、異国の、あるいは空想上の生き物である点でも異色の作品である。
解説者はこの作品を「仏画」であり「写経」の意味を持っているのではないかと控えめに述べられている。なるほどと納得できる見方である。
私見では、釈迦涅槃図で、有象無象が寄り集まってくるのに、感じとして似ている。ただ主役としての釈迦本人がいない。生き物たちが仲よく寄り集まっている。すなわち、弱肉強食でない「共生」の姿、生き物の理想郷を描いているのではないかと思う。図案化、模様化することは、現実の生々しさを捨象して、より高次のの理想郷を示唆しているのではあるまいかということである。
訴えるものがあり、不思議な魅力を感じさせるユニークな作品である。