松園美人画の気品あるたたずまいが、美しく息づいている大判画集
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奥ゆかしいなかに品がある、そうした日本女性の静けさを湛えた美しさを描き上げていった上村松園(うえむら しょうえん 1875-1949)女史。
日本髪を結い、着物を着た女性が、団扇片手に佇む、涼しげな立ち姿を描いた絵。胸に抱いた幼子を、愛しそうに見つめている母親の絵。艶やかな着物を着た女性が、扇を手にきりりと舞う姿を捉えた絵。
本画集に収められた九十七点の絵を眺めていくうちに、古き良き日本の女の内側から輝き出す気品が、すーっと胸に沁み込んで来る心持ちになりました。山本周五郎や藤沢周平、平岩弓枝といった時代小説の名手が描き出した時代小説の中の女性たちが、ここに美しく息づいている、そんな気持ちにもなりました。
縦(高さ)305mm×横265mm×厚み23mm の、ずっしりとした重量感のある大判の画集。平成六年(1994年)発行『上村松園』の新装版。
同じく日本画家の息子、上村松篁(しょうこう)の「序」文を巻頭に、本画集によせた杉本苑子「花の浄土」と梅原 猛の「理想の女性像を求めて」、三期に分けて掲載した全九十七点のカラー図版(美しい仕上がりの印刷は、まず申し分のない出来映えです)、松園女史の生涯ならびに「恋をテーマにした三部作とその周辺」について記した塩川京子の解説文、それに年譜と作品総目録を巻末に掲載した一冊。全238頁。
印刷図版の色合いなど、絵の見ごたえが落ちるのと、絵の端々に記された活字がわずらわしく感じられる難点はありますけれど、松園のおいたちとその活躍、代表的な美人画の鑑賞のポイントなどを綴った加藤類子『もっと知りたい 上村松園 生涯と作品』(東京美術)は、なかなかの好ガイドブック。値段も手頃なこちらで、松園美人画の魅力にまず触れて、さらに本格的にその素晴らしい世界に入ってみたくなったら、図書館などで大判の本画集を手にとってみる、というのはいかがでしょうか。