インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

20世紀美術 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,080
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
Amazon.co.jpで確認
純粋さの追求が抽象と幻想に向かう ★★★★★
 自分はカンディンスキーの絵画が妙に好きなのだが、20世紀美術といえば、いわく難解というのが相場で、しかしこの著書を読み込めば、その営為は決して難解さのための難解さではないこと、現代美術とは、ある種の純粋さを追求しようとする行為が、いつだって重層的である現実の一側面を捉え切ったときに極度に抽象的に、あるいは極度に幻想的になっていく結果として表象していることが了解できる。音楽にたとえてみれば、パンクやハードコアパンク、ジャーマンロックなどのラウドな音楽が野蛮に響くだけかえって純粋で優しくて知的でもありえる、といった感覚に似ている。

 構成は序章の後に「オブジェとイマージュ」「構成と表現」「新しい伝統」「今日の諸潮流」終章、と続いていて、各個人・各流派の狙っていた表現の意図が、先行する流派と同時並存する流派とのせめぎあいでどんな風に生まれ、実践され、変容していくかをわかりやすく跡付けてくれる。その経過では、美術界内の影響だけではなく、科学や技術の変化や、社会生活の変化、国内情勢の変化や国家間の関係の変化にも影響を受けていく。

 読み進めていくと気づくのは、20世紀美術の新技法は、大きな問いかけがなされた際の切り返しとして生成し、実行されたということだ。根源的問いかけは芸術家の外部から発せられることもあれば、芸術家の内部で生まれることもあり、時代が経過していくにつれて、そんなもともとの問いかけの声が小さくなっていくのが今に至る20世紀美術史のモチーフなのではないか。現代美術のわかりにくさは、ここにあるのだと思う。

 その問いかけの内実について詳しく明らかにするのは今の自分には難しいが、生きていくこと、生きていることの実質はなにか、といった域にまで達する深さを持ったものだっただろう。その声を途絶えさせたのは「生産性の政治学」でもあり、この類の書籍を読んでいると自分の周りに強く感じる、根源的に問うことを無効にするハビトゥス、イデオロギーなのだと思う。

 岡本太郎の著作と一緒に読みたい一冊。
ピカソが身近になった ★★★★★
 わたしには、ピカソの描く女性が綺麗だと思えませんでした。描かれた正面向きの両眼の間には、横向きの鼻。その下には斜めにゆがんだ口。しかも眼も鼻も顔の輪郭からはみだしているではありませんか。こんな絵が何億円単位で売買されているなんて、世の中おかしいのではないか。「ピカソはいい」なんて言っている人は、美術評論家が素晴らしいと言っているから付和雷同しているだけなんじゃないか、と本気で考えていました。

 そんなわたしに、「どうしてピカソはこういう女性像を描いたのか」を教えてくれたのが本書、「20世紀美術」です。ピカソの絵画に対する考え方も分かりました。しかも、その考え方がとても論理的なことに驚きました。

 この本では、ピカソも含め、19世紀後半に活躍したモネやセザンヌ、また、マティス、カンディンスキー、モディリアニ、クレーなど多くの画家が、それぞれどういう考え方を持って、作品の制作にあたっていたかが分かります。今世紀美術の大きな流れもつかめた気がします。今では、ピカソをはじめ、20世紀の芸術家の作品がとても好きになりました。この本には感謝しています。