普段馴染みの無いビザンツ教会の構造や、アトス半島修道院内の生活、ビザンツ末期のイコン美術が 静的で冷たい中世的表現から作者署名付のルネッサンス的作品の萌芽が既に見られた点など、ギリシャ在住時に著者が遭遇した経験を交えながらいつのまにか ビザンツ美術や史跡が身近になってゆく。
紀行本というと、著者の心情や体験に重心が置かれるエッセイが大半であったり、逆に旅行ガイド的に写真だらけだったり、歴史記述に偏り勝ちだったりするが、本書は、そこは学者、バランスよく体験談と学術的説明を織り交ぜて 良質な完成度の高いビザンツ世界旅行案内となっている。このような書物が他の地域・国についてももっと増えて欲しいものである。