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ミュージアムが都市を再生する

価格: ¥1
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日本経済新聞社
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   最近、芦屋市立美術館の処遇が一部で話題になっている。慢性的な財政難の折、市当局は開館して10余年を迎えるこのミュージアムの民間委託を模索、委託先が見つからない場合は売却もしくは閉鎖も止むなしという態度で臨んでいるというものだ。(2004年1月現在)

   何ともお寒い話だが、しかしこれは日本のミュージアムが置かれている状況を如実に示すエピソードと言えるだろう。バブル期に各地であれだけ乱造されたミュージアムが、今となっては散財の象徴として目の敵にされている。社会も政府もただ目先の採算を気にかけるばかりで、優れた文化資本のコレクションや膨大な情報が蓄積されたミュージアムを成熟社会の充実に役立てようという本来の認識などどこかに置き去りにされてしまっている。これでは、高い工費を注ぎ込んで建設されたミュージアムも浮かばれまい。

   こうした意識の低さを改革するためにも本格的なミュージアム・マネジメントの紹介・導入が期待されるところだが、その点独自の切り口で書かれた本書は多くの示唆に富んでいるといえよう。マネジメントといっても、本書の場合はもちろん採算や効率の話に終始するようなことはなく、ミュージアムを都市や経営との関連で位置付け、行政改革、住民参画、サービス産業の充実などさまざまな切り口からその重要性をとらえていくことを基本姿勢としている。2人の著者はそれぞれ行政評価と文化政策の専門家で、各々の立場やミュージアム観は微妙に異なっているのだが、その相違がまた本書の議論の奥行きを深め、そこで提案されている解決策の説得力を増す効果をもっている。

   あとがきによると、現在のミュージアムをめぐる諸問題は「文化vs経済」「ローカルvsグローバル」「政府vs民間」という3つの対立軸を中心に形成されているという。これは図らずもミュージアムが現代社会の縮図であることを物語っている。単に「ハコモノ」を糾弾するだけの議論では、もはや何も論じたことにはならないのである。(暮沢剛巳)

日本の行政の硬直さ ★★★★☆
博物館からという視点で日本の行政改革がいかに偏った内容であるかが良くわかる
本です。単に叩きやすいところを叩き、無駄遣いと称して根こそぎにする。
こんなことをやっていると日本にはいつまでたっても文化が根付くことはないような気がします

勿論博物館側の見せ方も欧米の博物館運用を見て改善する必要もあるでしょう。
しかし大枠で見るとどうも日本の行政による問題がおおきいと感じられました。
文化政策を各論で考える貴重な一冊 ★★★★★
■すでに米国では、図書館と並んでミュ−ジアムが民主主義を支える基盤装置として、
学校と同等に重視されているという。
それに比し日本ではミュ−ジアムに対する認識が遅れている。
 そこで都市や経営という文脈の中で、
装置産業、流行依存産業、メディア産業、公共サ-ビスとしての特性を踏まえながら、
今後のミュ-ジアムのあり方を提起する意欲的な書である。

■これからのミュージアムを考えるうえでの問題は、
「文化vs経済」「ローカルvsグローバル」「政府vs民間」という
3つの対立軸を中心に形成されているという。
まさしく“ミュージアムが社会を写す鏡”であることを示しており、
ミュージアム改革が日本全体の構造改革のバロメ−タ−だとも言い切ることにつながっている。

■ 市場経済原則も、また一般的な行政改革の手法をそのまま当てはめることのできないミュージアム。
 民間企業でないからこそ、ミュ-ジアムらしさを維持するために
先端経営のノウハウが必要だと結んでいるのには、
著者の慧眼を示すものといえよう。
残念 ★★☆☆☆
経営という視点からミュージアムをとらえ、批評を加えた内容で、その点においては目
新しさもあり、的確な分析がなされている部分もある。
だが、全体としては日本の現実を無視して、主として海外の事例を無批判に羅列したに
とどまる記述がほとんどを占め、折角の分析と矛盾した内容に終わっている。
そもそも、「ミュージアムに行く文化」そのものが無い日本において、ニューヨークの
事例など何の参考にもならないといったことについて、認識しているような記述も見受
けられるにもかかわらず、この本全体の内容はそこから抜け出せていない。本の題名か
らしてそうである。テート・モダンはロンドンのサザークを再生させたが、じゃあ同じ
ことを日本でやって、沈滞した都市を再生できるのか?ミュージアムにあれだけの規模
の投資する文化自体が、日本には無いのにである。また、例として上がっているビルバ
オが、当初は盛り上がったものの、継続した投資が大変で、地域にとってのお荷物にな
りかねない現状には触れられていない。
一方、日本のミュージアムの経営上の問題は、明確な経営方針と経営主体の不在、並び
に基本投資が少なすぎる点にあることを分析しながら、対応策として上げられるのが経
費の節減という矛盾した内容なのは、リストラの流行という経済の時流に迎合したもの
だろう。しかも、経費節減と目新しい事業の実施を同時に説く内容には、著者に経営感
覚があることを疑わせるに十分である。
一読の価値があることは認めるが、同時に経済人の言うことは眉に唾をつけて聞かねば
ならないことも認識させてくれる。というか、学問としては詰めが甘すぎる。
ミュージアムはあなたのもの ★★★★★
「liberal arts」は、教養と訳されている。
実はこの辺の言葉に対するセンスのなさが、著者の言う根深いミュージアムの危機であるように感じた。

リベラルアーツは、きっとある人が、幸せに生活をするためにはどうしらよいかを考える、あるいは教える、そういったことを意味していると思う。「自由に生きる術」くらいの意味がきっとリベラルアーツの真意なのだろう。

さて、本書は、従来のミュージアムについて、2つの大きな主張を掲げている。まず、ハコモノであったミュージアムを、コンテンツ、しかも単なる「啓蒙」でなく、人がより豊かに生きるためにインテグレテイトしていくミュージアム像を与えている。そして、ミュージアムにも「経営」の視点が必要であるという点を実例をもってして訴えている。様々な読み込みが可能であろうが、この本を読み終わったとき、きっと気付くと思う。ミュージアムって自分のものだということに。岩波新書『未来をつくる図書館』(菅谷明子、2003年)を併読すると、いいかもしれない。

ミュージアム・マネジメントの最高峰 ★★★★★
この本はミュージアムという地味なテーマを一気に社会と経済の真ん中に引きずり出した。歴史に残る名著となるはずだ。なにしろ専門出版社ではなく、日経新聞社から出した。最初から広く世に問う構えのようだ。マンネリに陥り、展望を失っていた日本のミュージアムマネジメント論に最新の経営理論、企業改革、ニューパブリックマネジメント論を一気に流し込む。本書はまた経済至上主義、芸術至上主義の両方を容赦なく批判し、あたらしい都市とミュージアムの共生モデルを提示する。最近の民営化、独立法人化を「民間手法」の名を借りた単なる行政改革と喝破する筆者の鋭い洞察にも感心。NPOへの大政奉還など新しいアイディアも満載されている。内外の事例分析が行き届き、とにかく手がかかっている。大著になるはずがエッセンスを煮詰め、実務家向けに書いた啓蒙書といえる。本書の根っこにあるのはミュージアムと芸術文化への強い期待と愛情である。