ガーデニング感覚で建築を扱うために
★★★☆☆
海外の論述を日本語で解説してくれて
かつ、日本に適用するとこうなる。というのを示してくれる。文章は10+1に掲載していたのを加筆してまとめたもの、加筆部分が基本的におもしろいので、10+1を読んだ人にも、楽しめる内容になっている
都市、セミラティスはセヴェラルなツリーであるというのは、非常にわかり易かった。ヒトは都市に対していくつものネットワークを敷いている、けれども、それらは一つの同一なものではなく、複数であり。ヒトはそこを横断している。
現実の空間とは、ネットワークを考える上で常に距離の問題に脅かされる。そこから、結ばれるセット、クラスターは限定される。都市計画において、その限界をどのように扱うかが、一つのおもしろさのように思う。
セミラティスをセヴェラルなツリーである、と仮定していった場合。
ヒトは「都市の建築」という考えをどのように受け入れるのだろうか?
今日、リノベーション、コンバージョンのコンペも増えて改めて、この思想が持つ意味を考え直す機会が訪れているように思う。時を経るとともに分裂症になっていった建築の時代から、始めから分裂症の建築の時代において、建築が受け継ぐ記憶とはなんであろうか?大型のイベントスペースのような空間が日々、記憶を生産して、消費していっている。
その記憶は、ヒトの中にただあれば良いものなのか?
それとも、開かれた海の中を漂わせるのか? なにかに結晶化させるのか?建築家が改めて都市について考え直す時代が来ているように思う。
何度も読み返す本
★★★★★
扱われているテーマは、すでに多くの人が論じた桂離宮やピラネージ、
あるいはすでに忘れ去られようとしているパタン・ランゲージ
だったりしますが、いたずらに難解さを装わず、
大所高所に立って墓穴を掘る事も無く、
また論文特有の読みにくさを感じることもありません。
創作を感じさせる推論部分などは「論文」としては
眉をひそめる向きもあるかもしれませんが、
自然と読み進められる、という点で、
エンターテイメント性すら感じさせます。
ただし、若干の建築に対する基礎知識は必要になります。
おくぶかい都市・建築の全体像
★★★★★
都市・建築の生成過程について書かれた本。日本の中ではきわめてオリジナリティのある著者だと思う。雑誌連載中も一つ一つ面白かったが、まとめて読むとその奥深さに驚く。おのおのの章が用意周到に綿密につなぎ合わされて、都市・建築が創造されていく過程の秘密が明らかになっている。間違いなく今後参考にされる本だと思う。
冒頭にセヴェラルネスという耳慣れない造語の意味がなんとなく分かる写真集が付いているところもお得な感じがした。