韓国風(笑)?
★★★★☆
今回の作品は普段のファッショナブルな感じと違って、少し幸せがやってきたらすぐに悲しい出来事が毎回やってきて新境地を求めて、そしてまたそこで悲しい出来事が…の繰り返しで何とも言えないんですが、いつもながらの唯川さんらしい女性のはなかさや心の内に秘めた愛情の深さの表現方はいつもと変わらず淡々としていて読みやすかったし面白かったです。ただ星4つにしたのは、1つの作品としては読みやすくて好きなんですが、唯川流の基本型のファッショナブル感が今回は無かったので1つ減らせて頂きました。
唯川恵さんの新境地
★★★★☆
欠かさず読んでいる唯川恵さんの新刊です。
今回の長編は実の姉弟の様に身を寄せ合って生きて来た施設育ちの芳子と周也
この2人が軸となり物語が進んで行きます。
どこまで逃げれば居場所が見つかるのだろう…
血の繋がりよりも深い絆で結ばれた2人の行方が気になって、本を閉じる事が出来ませんでした。
いつもの唯川さんが書かれる様な恋愛の要素は少ないですが人間味溢れる濃いお話に仕上がっています。
第一章〜第八章、そして最終章に至るまでに所々に隠された伏線がラストに至るまでに綺麗に繋がって作者の力量が感じられます。
芳子と周也は当然ですがその他の登場人物カオル、ハオ
本当に憎くなる多崎、堂島の人物描写は見事でかなり感情移入して読めました。
悲しいラストですが、その後の芳子と周也が幸せになってくれたらと心から願わずにはいられない切ない作品でした。
唯川さんの新しい引き出しを見た様な気がして満足な1冊です。
恋愛よりも深い愛情。
★★★★☆
恋愛小説の旗主・唯川恵さんですが、この小説は、恋愛色が薄い。もっと、
自分では抗えないような運命とか、負のほうへ引き寄せられていく人間の
愚かさとか、シリアスかつ普遍的なテーマを描こうとしている気迫が伝わって
くるようで、ある種の凄みを感じた。
親の愛に恵まれず施設で姉と弟のように育った芳子と周也。
周也と穏やかに暮らすためなら仕事を選ばない芳子と、
上司の嫌味くらいですぐにやめてしまういまどきのダメな若者風周也。
最初は、この「愚弟」っぷりにイライラした。だけど、どうやら、
芳子は、彼が失敗したり愚かな真似をすると「私が何とかしないと」
と、生きる張りを感じて、背筋がピッと伸びるみたいだ。そして彼に
好きな女の子ができると、幸せになるように、そしていつかその間に
できた子を抱きしめることを夢見ると同時に、周也が人のものになって
しまうことをどこかで恐れているようにも見える。
性を交わさない状態の男女の愛情は、単なるもたれあいにも一見見えるが、
この怖い世界でひとりで泳いでいくことは難しいと知り尽くしたふたりだからこそ
かりそめっぽくてもともに暮らそうとなんどつまづいてもこらえようとするのだろうな、と
読んでいて説得されてしまったような気がする。
クセのある脇役たちが物語りに複雑な陰影をつけていくところも、割と、メインキャラを
しっかり描き脇は脇、という感じだった初期の唯川作品にはない分厚さを感じさせる。