このいかにも親しみを持たれそうな小さな女性は、飽くことを知らない一般大衆に長年にわたりティーン・ポップを提供する間に、いつしかあまりヒット曲を出さなくなっていた。近作『Kylie Minogue』は、音楽界でもっとも著名で尊敬されているソングライターやプロデューサー数名とコラボレーションしたにもかかわらず、批評的にも商業的にも振るわなかった。さすがにカイリーがチャートをにぎわす時代もそろそろ終わりかと思われたものだ。
ところが、少々意外なことに、カイリーは『Light Years』で原点に戻っており、「So Now Goodbye」や「Under the Influence of Love」といったトラックでは、まるでセクシーな羽毛の襟巻きにくるまれたディスコの歌姫だった頃(「Step Back In Time」の時期)に戻ったかのよう。これは、ドナ・サマーのアルバムに収められていてもおかしくないような曲を満載したディスクだ。ダンス的な要素が豊富に盛り込まれた内容で、第1弾シングルとなった「Spinning Around」が気に入った人なら、まず失望することはない。ヴィレッジ・ピープルっぽいスタイルの「Your Disco Needs You」は、すぐさまみんなでラウンジで踊りだしたくなるだろうし、イージー・リスニング・スタイルの「Loveboat」は、仲間を集めてのカクテル・パーティーのBGMにぴったり。本作は1990年の『Rhythm of Love』以来のカーリーの会心作だ。
彼女が今なお“愛のリズム”を持っていることを証明した。(Ronita Dutta, Amazon.co.uk)