よかった
★★★★★
いちいちの分析や説明ではなく、経験や体温や感覚嗅覚‥それを読みながら想像して体験しているかのようで、私には読みやすかった。
とても心に響くいい本でした。
山の一部
★★★★★
私の自然感覚を文章にすると、まさにこうなるのだなぁと。
稚拙な文しか書けない自分にはうらやましいほどフラッシュバックさせてくれます。
北海道の季節の移り変わりは山で感じるのが一番しっくりきますね。
小説なのですが、かっこの良い飾りっ気があまり無い気がします。
いま生きている人間が彼方に忘れてきた言葉にならない感覚を、自ら感じたまま文章にしていると。
猟師がけものを獲ること、けものが山で生きること。
けものが山をあるいて草木をはむ実を食べる、猟師が山をあるいて銃で獲る。
相手が鹿なら逃げて獲られて。
羆なら何かを間違った方の命が無くなります。
銃を持っているから圧倒的に人の方が有利かといえば、全然そんなことないはずですよ。
山に身一つで入って生きると決めたら、狩ることも狩られることも同じですね。
この本が書かれたということは、この方は他の動物よりも賢く用心深かったのだと思います。
もう私にはこんな自然で生きている力など無いと、改めて実感させられる不思議な気持ちにさせられました。
良い本との出合い
★★★★★
北海道は自然に恵まれ、野生動物の宝庫とは言え、高度経済成長期の日本で、20歳そこそこで猟師として生計を立てる決心をした若者が居た、と言う事実にまず衝撃を受ける。大自然の中で自分の五感だけを頼りに獲物を追う姿は感動的である。
そして自然への感謝と動物に対して限りない愛情を注ぐ姿は、人間も自然の一部であることを理解させられる。読み進めていくうちに、この本のカバーに犬が描かれている意味を理解する。
この本の内容はすべてフィクションである。一人の人間の成せる業とその迫力に圧倒される。
説教臭くなくてイイ。
★★★★☆
猟師とか漁師の自伝って、
「生命を喰らうことに感謝せねば」とか、
「都会の子供は、肉が最初からパック入りだと思ってる」とか、
“ハイハイわかりました、悪うございましたよ”と辟易しちゃうのが多い。
この著者は、
「申し訳ないけど生き物を捕るのが好き」
というところから始まっていて共感できる。
読み進めるうちにわかってくるのは、
特殊な世界の体験談に終始するのでなく、
主題は「愛犬へのオマージュ」だということ。
読み終わったアナタは、
もう犬が飼いたくて飼いたくて、
庭がほしくてたまらなくなる。
犬を飼うために引っ越したくなりました。
今を生きる〜羆と猟師の生命の詩
★★★★★
これは作り物ではない。著者の猟師としての生き様をそのまま切り取った詩だと思う。
生活の糧を得るため狩猟を生業とする人間=著者と失われ行く北海道の自然の中で必死に生きる野性動物=羆の間に繰り広げられる冷酷な生命のやり取り。
とてつもない孤独と緊張感の中、黙々と獲物を追う猟師。読み進むうちに、いつの間にか著者と一緒に羆の足跡を追っている自分に気付くだろう。
部屋の中で読むより、大自然の中を旅しながら読みたい本である。