2003年にデビュー作『ヴィスタス』を発表、型破りのピアノ・トリオと話題になったザ・バッド・プラスのセカンド作。このトリオ、03年の斑尾のニューポート・ジャズ祭でライヴを見たが、不敵な面構えがなんとも印象的だった。デビュー作ではニルヴァーナの曲をカバーしていたが、ここではオーネット・コールマン、ピクシーズ、ブラック・サバスの曲を取り上げていて、またまたビックリ。フリー・ジャズのオーネットとヘヴィメタのサバスを同時にカバーしてしまう懐の深さというか音楽性の広さに、彼らの特徴が集約されている。

   ふつうのピアノ・トリオであれば、リーダーの名前をグループ名につけるのがジャズでは一般的。しかしリーダー不在、3人が対等の関係というこのトリオはグループ名がユニークなだけでなく、その演奏も伝統的なジャズのスタイルにはこだわらず、脱ジャンル的なスタンスで挑む。ロック世代のジャズ、不思議なジャズというほかない。（市川正二）