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手術室の中へ ―麻酔科医からのレポート (集英社新書)

価格: ¥799
カテゴリ: 新書
ブランド: 集英社
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   ベテラン麻酔科医による「手術患者の心得」。麻酔科医と聞くと、患者に麻酔を打つだけの、専門職というイメージがあるが、麻酔自体が手術において重要なかぎを握る医療過程となるだけに、その職務領域は想像以上に幅広い。

   手術前の検査では患者のデータを収集すると同時に相談相手ともなり、術中には患者の代弁者、術後には麻酔のダメージから患者が回復するまで見守り続ける管理者となるのが、麻酔科医なのである。本書では、そんな患者に最も身近な手術スタッフが、麻酔の危険性、術前検査の重要性、手術のスケジュールから手術室のレイアウトまで色々と教えてくれる。

   「手術は合法的な傷害である」と著者は断言する。リスク以上のメリットがないと判断した場合は、決してやるべきではないのだ、と。また麻酔の危険性にも言及し「痛みや恐怖から守ってくれる強い味方」的な麻酔信仰に対して警告を発している。特に全身麻酔は心肺機能が弱めるため、体内の酸素供給量、血圧も低下し、肝臓や腎臓に負荷をかける結果、術後の肝機能障害を引き起こすケースが少なくないのだとも言っている。

   本書ではこうした手術の不安要素を丁寧にすくい上げ、実際に術中に起こった事故の再現シーン、麻酔科の術前診察室における患者との会話などを挿入しつつ、難しい内容を易しく説明してくれる。手術未体験者はその予行演習に、予定者なら「手術ストレス」の軽減に役立つかもしれない。(中山来太郎)