胎児心エコーの入門に最適
★★★★★
この本は胎児心エコーの入門書です。この分野の第一人者である川滝先生が、自らの講演・講義の内容を1冊の本にまとめたものです。
胎児の心臓病には生まれてすぐに治療を開始しないと死亡したり予後が悪くなるものがあります。こうした胎児の心臓病を、忙しい日々の妊婦診察の中でいかに短時間で効率的にスクリーニングするか、その方法が解説されています。そして、さらに個々の心臓病の診断のポイントも併せて解説されています。
私自身は周産期センターで産科医療に携わっていますので数回しっかりと読み込みました。これで少なくともスクリーニングで胎児の心臓病を取りこぼすことはなくなりました。しかし、確定診断となるとなかなか難しいものです。この本では写真や図は豊富ですが、動画がなく実際のエコーは動画で観察するため、止まった図ではしっくり来ない点がありました。その点を改善された、続編となる動画で見る胎児心エコー診断が1〜3まででました。こちらで各論は学習するのがよいかと思います。しかし、いきなり各論に行く前に、スクリーニングのポイントがわかりやすく解説された本書で基礎知識をつけるとよいのではないでしょうか。
妊婦診察にあたる産婦人科医師が胎児の心臓を観察する際に知っておくべきポイントがほとんど網羅されています。正常の妊婦さんを扱う産科クリニックの医師や産婦人科の勉強中である若手医師や研修医は本書のスクリーニングのポイントだけでもマスターし、スクリーニングで異常と思われる症例は周産期センターへ紹介するなり、上級医師にそうだんするなりすればよいでしょう。また、周産期センターの産科医師は私自身の経験でも、本書だけではスクリーニングはできても各論の診断までは到達できない可能性があります。そのときには続編となる動画で見る胎児心エコー診断が1〜3の動画をみてさらに経験をつまれるとよいのではないでしょうか。