中山特許の最新版
★★★★★
前の版である「工業所有権法 上 特許法」から10年、書名を内容の実態にあった「特許法」に直しての新版が発行されました。中身も以前の縦書きから最近の流れに合わせて横書きとなっており、脚注もページの下部に表示するスタイルに変更されて(少なくとも自分的には)見やすくなっています。
内容もここ10年の毎年のような法改正と多数の判例を反映してか、全面改訂されたかのように多くの部分が書き直され、特に職務発明の対価については前の版では2ページ程度の記述だったのが最近の傾向を反映し、かなりのページが割かれています。
また、はしがきで述べられているとおり判例評釈については省かれており、記載も幾分かシンプルになったように感じました。
やや残念な改訂
★★☆☆☆
名著の10年ぶりの改版ということで期待していたのですが、やや残念な改版でした。
まず、前版以降の重要判例などに対して先生なりのコメントを示された部分が殆どありません。また、改説された部分なども殆どなく、大きな論点については以前の記載のままと思われる箇所が多いです。生ゴミ処理装置事件に対する先生のお考えなど拝聴したいところでした。
それから、本書の前書きにあるように手続の記載がかなり増量されてはいるのですが、いろいろと文章を接ぎ木したような箇所が多く読みにくいです。ついでに、訂正請求と訂正審判を混同していると思われる箇所などもあり、「?」なところも結構あります。
このような改訂であれば、無理して買わなくてもよいのではないかと思います。先生の考え方として、前版の『工業所有権法(上)』以上のものが示されているとは思えません。また、弁理士試験・司法試験の基本書として使うにも、分量が多く、かつ読みにくいので使いづらいのではと思います。なお、個人的には、受験用としては標準 特許法、実務的には特許の知識 [第8版]がよいのではないかと思います。
なお、誤解無きよう補足しておきますが、特許法の基本的な考え方を学ぶのに中山先生のご著書を読まれることは本当にお奨めできることだと思っています。ただ、この「改版」では、「単に読みにくくなっただけなのではないか?」という点が残念だということです。